気候変動防止モデルマスタープラン作成過程報その4
2016年12月には、モデルマスタープランづくりのワークショップを開催しました。
「モデルマスタープラン」とはどのようなものか?
「モデルマスタープラン」づくりに何が必要か?
マスタープランの要素
といったことについて、出てきた意見をご紹介します。
【実施日】2016年12月27日
【場所】消費生活総合センター
【参加者】環境首都創造NGO全国ネットワークのメンバー
■モデルマスタープランづくりワークショップ■
【「モデルマスタープラン」とはどのようなものか?】
・パリ協定(今世紀末に平均気温上昇1.5度未満、後半に排出実質ゼロ)を本気で実現するために長期的視野で考え、率先して地域から体系的に実行するもの。
・温暖化対策だけではなく、地域住民のQOL(生活の質)もあげながら、多角的に持続可能な社会を実現する。
【あるべき姿】
・バックキャスティングで考えていくことが重要。
・行政の行動計画である区域施策編と同じものは面白くない。住民、企業セクターも含めた「社会計画」がいい。ローカルアジェンダ21は環境基本計画の行動計画に位置付けられたのが良くなかった。
・NGOと自治体が一緒に作ることは大事だと思う。行政の計画は目標年が10年後くらいだが、気候変動問題の2050、2100年も見据えて作れるといい。モニタリングできる指標が必要。
・「作るプロセス、できたもの、できた後」が重要だ
・人のエンパワーメントも含めて、担い手を想定しながら作り込んでいくことが必要。
・海外のフューチャープランも参考になる。
・どこまで現在からみて「理想」なことを書くべきなのか。また、現実とのギャップをどう埋めるかを書く必要がある。
・世の中のパラダイム変換の取り掛かりになるものがほしい。
【自治体との関わり方】
・行政計画ではない住民参加も含めたプロセスをどうするか。重要な部分だが、大変ではある。地域に根づいた団体があれば取り組みやすい。
・自治体は実行計画を策定している。市民がより身近に感じ、実現可能にみえるものを見せることも必要。京都市の計画は私たちのライフスタイルをどうしたらいいかをわかりやすく提示していると思う。再エネをこれだけ増やせば、ゼロになるというような前向きな例を提示している自治体もあり、そこに示唆を与えたい。
・計画を実行するには自治体にとって覚悟がいることを伝えておく必要がある。それぞれの自治体が、市民・事業者と一緒にやるイチオシがあったほうがアピールになる。京都市の計画は気候変動対策に貢献する事業者一覧評価が別にある。それに加えて市民側から客観的に評価するしかけが必要だろう。
・ヨーロッパは自治の意識が強く、インフラも自分たちで変えるイメージがある。千葉大の倉阪先生がエネルギーインフラの将来変化予測モデルを作っており、日本でそれができると魅力的。
・行政が抱えている政策課題にうまく乗っかった大胆な政策提案ができるといい。公共インフラのメンテナンスはこれからの日本の課題となる。上下水道の更新に合わせて熱配管を入れたり、既存の建築物の大胆な省エネイノベーションなどができたりすると大きく変わる。
・自治体のネットワークという我々の強みを生かして、法体系そのものも変えるように訴えかけていくことも必要になる。
【住民を巻き込む】
これまでの計画は対策を書いているだけで、実行する人の育成はデザインできてない。工務店や電気店が自ら考えてもらう仕組みが作れればいい。
・住民は、マスメディアが触れていなかったために、知らない情報が多い。普段手にするスマホを通じて情報が伝えていけないか。
・メディアも含めたマルチセクターを考えることは重要。
【都市部と地方】
・交通網が無くなっているという課題は、すでに住民から声があがってきている。ただし、住民にはどうにかして変えようというイメージがない。交通と土地利用は喫緊の課題。
・森づくりと家は伝統的につながりがあり、都市計画にとっても大事。政府も予算付けし始めている。
・特にエネルギーで都市部と農村部との連携が必須である。ネットワークを生かしたい。
・都市生まれの人が農村へIターンでいくケースが増えている。お金だけではない、人の循環もモデルプランとして示せるといい。
【各地の取り組み】
・長崎では研究者や学生と市民で人口減も加味した2070年の長崎を描こうとしている。
・対馬市が域学連携として、学生や社会人の短期生活支援をする代わりに研究をしてもらっている。その結果、住民が自分たちの地域を改めて知ることになり、子どもへのESDも進んでいる。ツシマヤマネコを通した生物多様性保全に関わる棚田や漁業の保全、再エネをとおした島づくり、活動を伝える対馬フォーラムを行っている。
・SDGsを日本の地域から読み直したものを作り、うまくつかえないか。
・SDGs関連では、外務省と自治体との連携、北海道で市民版SDGsづくりの計画、岡山でESDと絡めた計画があるようだ。
■モデルマスタープランづくりワークショップ■
【「モデルマスタープラン」づくりに何が必要か?】
・ビジョンを描く。
・流域で考える。
・ビジョンを描くには、過去から現状までの分析が必要。
・あえて未来のみを語ってみてもいいのでは。
・東近江では、市民が語る未来に対して、研究者が現状分析を示すキャッチボールができた。
・2100年実質ゼロは入れる。
・ざっくりした地域の経済状況をマスタープランに入れる。
・環境省が水俣で地域版産業連関表を作った。産業では外との関係性が重要となる。
・未来の家族や観光客の1日を描いたショートムービーを作ってはどうか。
・シチュエーション設定をしてみて、ギャップを知り、シナリオを作る。
・地域の持続可能性指標を作る。倉阪先生、中口さん、国環研で内子町とフライブルクの比較をした。地域特有なものがないと面白いものができないとわかった。
・環境首都コンテストで将来重要な産業と答えたのは多くが農業だった。
・女性の役員率などSDGsの要素もいれたい。
・大胆な数値目標が必要(行動の8割は公共交通、建築物の8割はエコ建築など)。日常のアクセスビリティも考慮したい。
・指標は「共通の指標」「地域特性を考慮したもの」「SDGsなど大きなもの」が考えられる。
・ギャップを埋めるための施策(対策をやるにはどれくらいの職種の人がどれくらい必要なのか)
・ビジョンを描く上で、人口流出等の現実を書きすぎると夢を描けないのではないか。倉阪先生は大胆なエネルギー転換を促すためか、あえて現実をつきつけることを書いている。
・外からのボランティアも加味した「活動人口」を考えている(同じような概念で地域活動総量と呼んでいる先生もいる)。こう考えると人口減の中で希望あるビジョンを描きやすい。
・大胆な政策提言(ex.国内キャップ・アンド・トレード)
・情報の共有だけではない実質的連携。
【マスタープランの要素】
・何をやるのか(将来こうしたいからこうする)
・誰がささえるのか。ささえる人を育てる。
・お金、土地、資源、自然資本。
・自然、雇用、福祉など多角的に評価したモデル。
・土地利用計画図、主要施設の分布、移動、人口密度
・景観
・都市計画—近自然、子どもの遊び場、防災、都市の高温化を避ける緑地、河川(ウォーターフロント)
・産業へのアプローチ、目標。
・協働のプラットフォーム。欧米のローカルアジェンダ21はプラットフォームに行政が入り策定した。(ex.サステナブルシアトル)。指標もプラットフォームが行う。
・内発的発展。(ex.福井県池田町、島根県海士町)。
・教育。2050年の担い手を今どう育てるか。学校の先生とつながる地域コーディネーターの必要性。ESDの進化系。戻りたくなる村(岡山県西粟倉)。リテラシー、クリティカルシンキング。
・雇用。ドイツは省エネ改修が地域の雇用につながっている。地域の工務店の後継者がいない。