環境首都創造フォーラム2019年度in京都を開催しました

2020年1月16〜17日、京都市下京区のしんらん交流館にて、環境首都創造フォーラム2019年度in京都を開催しました。フォーラムにはネットワーク会員の自治体、NGO、研究者約50人が参加し、1日目「SDGsを活用した持続可能な地域社会づくりの実践」、2日目「気候変動にどのように適応し、かつ気候変動の危機をどう乗り切るのか」をテーマにゲストによるミニレクチャーをはさみながら、フリーディスカッションが行われました。

1日目 メインテーマ「SDGsを活用した持続可能な地域社会づくりの実践」

冒頭、近年の気候変動等をめぐる国際的、国内の状況、課題認識、SDGsのキーポイントとともに世界に残る多くの未解決課題が指摘されました。そのうえで、基本的な問として「SDGs活用が自治体総合計画に与える影響」「SDGsと気候変動問題との関係」が設定されました。

ニセコ町による講演では、本町がSDGs以前からの情報開示と住民参加を基本としたまちづくりを前提としていること、現在進行中の生活モデル地区構築事業そのものだけでなく、街区の完成と活性化に至る議論のプロセス、それを可能にしている基盤の重要が提起されました。

宇部市による講演では、SDGsと連動した総合計画に沿って、総合戦略局が触媒となり、
SDGs推進センター開設と、異なる活動分野をまたいだ人財の出会いに焦点を当てた
取組み(食品ロス削減のためのフードバンクを、教育・福祉事業と連動。SDG18番として子どもの育成)などについて紹介がありました。

北九州ESD協議会による講演では、ESDとSDGsの融合をめざし、アーケードやエコルーフに先駆的に取組む様子が紹介されました。例えば、魚町商店街でのPR動画づくり、商店主が講師となる「まちゼミ」の開催、芸術をからめたSDGs商店街。SDGs4番を中心に、全面展開している様子が報告されました。

まとめとして、増原氏(総合地球環境学研究所)からは、長井氏、ニセコ町に共通するキーワードは「内発的発展(社会、経済面)であること、ステークホルダー間で議論ができる場・土壌を「自分から動く」ことで切り開いていくことの大切さについて指摘がありました。また宇部市、北九州市に共通するキーワードとして「SDGsへの間口を広げる。人材/人財の育成、特に大学との連携」が見いだされるとの見解が出されました。今後に向けて、縦割りの行政・活動分野を超えて、トレードオフを防ぎながら相乗効果をねらうことが大切であり、「SDGsウォッシュ」「マッピング止まり」にならないために、SDGsをリストとして活用する際に、例えば貧困世帯の地域分布と災害緊急情報の広報をリンクさせたり、専用デバイスの配布等、課題間の連環(つながり)を意識した政策連携の意図をもつことが必要であることが指摘されました。

2日目 メインテーマ「気候変動にどのように適応し、かつ気候変動の危機をどう乗り切るのか」

冒頭で、線状降水帯、対応しきれない被害の予測、ハードのみ中心ではなく住民主体の適応、予測に対する対応が必要である旨問題提起がなされました。

田中充氏による講演では、「気候変動リスクの時代」として、すでに顕在化している被害、内水氾濫、インフラ整備への影響、地域脆弱性の改善・抵抗力の向上、適応法、既存適応策の強化、順応的管理、地域適応策の立案と推進の必要性が指摘されました。

野口正明氏による講演では、住民をどう巻き込むか?適応策の可能性と限界(台風19号の前には全く無力であった)、テーマの絞り込み(水土砂災害、鳥獣被害、猛暑健康対策)、住民主体の活動から行政・政治(自助・共助・公助)との連携、、避難所のキャパシティ不足、住民の意識変容から行動につなげていく必要について提案がありました。

田浦健朗氏による講演では、パリ協定の採択・発効を受けて、地域・自治体の役割が大きくなっており、民間も含め様々な動きが出てきている。大きな変革を地域から起こす必要性について提起がありました。

田中信一郎氏による講演では、今は必要なのは、次に何をするかの議論であり、基礎自治体がやるべきことは土地利用計画、都市計画の変更に踏み込むことでああり、再エネのトラブル回避、適正人口密度の維持、住宅の長寿命化・断熱化など、実現への具体的な動きを始めなければならない、自治体にとっては生き残りのための戦略であり、厳しい現実と課題に逃げずに向き合う、と激励がありました。

フリーディスカッションでは、行政以外のプレーヤーの必要性、首長(4年間の成果を問われる)、行政でなければできないこと、土地利用計画と庁舎、役場の体質を変える、日本には都市計画はない、環境政策統合(首長、国のトップの役割)の必要性などについて意見が出されました。

最後に、松下氏(京都大)からは、環境首都創造ネットワークのフォーラムとしては最後のフォーラム(9回のフォーラム)となり、来年度からは発展的な形でこの活動は継承される。これまでの先進的な取り組みをされているそれぞれの自治体の現場で開かれたフォーラムはとりわけ印象深い。これまでのフォーラムで
得られた様々な教訓は、参加された組織・個々人の中に、組織的記憶として受け継いでいきたい。来年度からはより広い枠組みで、より大きな社会的・政策的インパクトの創出を目指したい、との決意が語られました。

当日のプログラム(PDF)

 

独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて製作しました
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