気候変動防止モデルマスタープラン作成過程報告5

気候変動防止モデルマスタープラン作成過程その5

気候変動モデルマスタープラン骨子内容をもとに、次のような議論を行っています。

<自治体として使いやすい形にするために>
・自治体ごとに自然環境、都市構造、産業構造、解決すべき喫緊の問題、将来を見据えた課題などが違うことから、こちらで検討し考えた「気候変動モデルマスタープラン」を提案しても、特性や地域性が違う自治体が同じように活用できるものとして認識されるかどうか不透明である。
・SDGsを自治体の施策と絡めていこうとする動きも加速化するであろう。
・上記のことを鑑み、気候変動防止モデルマスタープラン(以下、モデルマスタープラン)そのものをつくる前に、まずはプランを作るための発想、考え方、ポイントなどをわかりやすく示した手引書を作成する。
・「パリ協定を実現していくことを前提に」「SDGsに掲げる様々な課題(この中に適応策が入る)をも併せて解決していく」コベネフィットな取り組みを進めていくための手引書を作成することとし、さらに議論を重ねていく。

<目標値・指標>
温室効果ガスの大幅削減を実現するための方策をプランへの必須掲載要素①とし、その指標を「炭素指標」として示す。
気候変動防止にもつながる自治体が抱える社会的課題の解決のための方策を、必須掲載要素②とし、その指標を「SDGs指標」として示す。

当初は、「ビジョンと連携して地域の持続可能性指標を多角的に設定する。目標は中期と長期の2段階で設定する」という案で議論を進めていたが、よりきめ細やかな考え方を手引書では示そうとしている。内容は次の通り。
(1) パリ協定の目標を達成しようとすれば、現在の延長線上の取り組みでは達成できないことは明白であり、「都市構造(産業構造)、土地利用」「建築物」「交通」「まちづくり」等へのこれまでの考え方を、ドラスティックに変えていくことが求められる。このことから、温室効果ガスの大幅削減を実現するための方策をモデルマスタープランへの必須掲載要素①とする。あわせて必須掲載要素①の指標(メイン指標)を「炭素指標」として掲載することを求める手引書とする。
(2) 気候変動防止にもつながる自治体が抱える社会的課題の解決のための方策を、モデルマスタープランの必須掲載要素②とする。その指標(サブ指標)としてSDGs指標を用いることで達成度を測ることを求める。ただ、SDGsには169ものターゲットがあり、その内容は実に多様である。そのため、小規模自治体ではその全てをフォローすることは大変であると考えられるため、気候変動防止につながる社会的課題解決のためのターゲットを予め当ネットワークでも検討し、小規模自治体にとっても取り組む重要性が高い、あるいは取り組むことで良い影響を及ぼすことができると考えられるものをある程度絞って、場合によっては加工して提示することも検討する。

<炭素指標とSDGs指標について>
・炭素指標は野心的なものを示せるが、SDGs指標は目標が立てにくい。例えば、自宅で仕事ができる社会となっていて移動によるCO2が減っている、単身高齢者用の集住化が進み再エネや熱供給を行っている、などのCO2とどのように絡むかであれば書ける。
・すぐに結び付けられなくとも、30年かけてこうする、という目指す社会を書いても良いのではないかと考える。例えば、長時間労働により余暇がなく地域の人とつながる時間が持てない社会は変える必要があるだろうし、長時間通勤なども変えていく必要があるだろう。フライブルグでは90%の人が歩いて公共交通まで行けるようにするにはどうすれば良いかを考えるようなことをしている。そのような発想による生活に結びついた指標は面白いのではないか。
・メインとなる指標に炭素指標以外のもの、例えば目に見えるものを加えることはできないだろうか。その方がイメージしやすく、わかりやすくなるのではないか。
・これまで例として出されてきた指標を膨らませると同時に整理も必要。指標の議論をする際には、いくつかのレベルがある。
●自由な発想で、SDGs指標としてどのようなものが考えられるか、各々から提案していくこととなった。

<将来像>
パリ協定が目指す社会、持続可能で豊かな社会の姿を、日本の地域社会がその特性に応じて描く。中期的な目標である2030年(前後)はできるかぎり具体的に、長期的な2050年は多様な指標にもとづいた目標を設定する。

・これまでは、総合計画で20年、環境計画では10年という単位でほぼ計画が作られてきた。自治体が2050年の長期ビジョンをつくるための手引書が必要と考える。再生可能エネルギーのみではあるが、再エネ100%のビジョンは国際NGOがすでに出しており参考にできるはず。
・ビジョン策定においても、これまでの延長線上でないということがポイントになる。
・新たな社会構造を想像すること、例えば、ごみを出していない社会を想像するなどといったことも、参考になるかも知れない(水俣のスーパーマーケットで販売されている野菜につけられていたトレーを無くしていった事例があるように決して夢物語ではない)。
・2050年だからこそ、言えることもあるだろう。現在存在しない技術に頼ろうとするなら夢物語と言えるかも知れないが、既にあるが、仕組みとなっていないものを社会に組み込んでいく、ということであれば夢物語ではない。
・具体的な社会像は描けなくとも、ごみや電気消費量等の、いくつかの「指標的目標」をもとにした将来像を示すという方法も考えられるだろう。
・そのためにも、ある程度の思い切った数値は欲しい。ただし、必ずしもバックキャスティングしないといけないわけではない。京都議定書達成のために積み上げ計算したことも実際は結構外れてしまった。
・家庭は再エネ100%になると思われるが、今の、高効率給湯器に補助金を出します、という政策では限界がある。例えば、これに対して、2050年に家を建てるときや生活をするときはこうします(これが標準)、といった手段がわかることが重要だろう(熱利用も今ある技術で、難しいことではない)。
・熱ももう少し融通しあえるようにできれば良い。下水分野で、ある程度小さい単位の処理システムであるコミュニティプラントを入れていく方向があるように、熱もある程度まとまった集落単位で小規模なシステムを入れていく方向としていければ良いだろう。
●長期ビジョンの描き方は、具体的な像を描くのではなく、指標となるような目標像を描き、それを統合することで描く方法を検討していくことで合意した。

独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて製作しました
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